八ヶ岳/石尊稜   
ジャンル
バリエーション
日 程 1回目:2005年1月15日(土)〜16日(日)
2回目:2月26日(土)〜27日(日)
             〔1泊2日〕
メンバー S/Y(CL,記録),K谷
計2名
行 程

2月26日 美濃戸口13:30/14:00−赤岳鉱泉17:00
2月27日 赤岳鉱泉5:00−日ノ岳ルンゼ取り付き7:30−稜線14:30−赤岳鉱泉16:30/17:00−美濃戸口18:40

Prologue…始まりはラッセルのみ】

1月15日
テントの中がだいぶ濡れてきた.相変わらず湿雪が降り続いている.いつも走る中央高速も久しぶりにチェーンを着け,走って来た.赤岳鉱泉小屋の前に張ったテント(エスパ−ス)は内張りのみのためか,もう湿ぽっさを通りこして濡れてきた.どういうわけか,K谷が,テント内の水溜りを見て,タオルを出してこれで拭けばいいと言っている.(なんで,冬山で,コイツ,タオル持っているんだろう.)快適さの消えたテントの中,シュラフにもぐり込む.明日も雪か.

1月16日
朝,雪がちらつく中を,石尊稜を目指してテントを出る.頭の中を赤岳西壁に変えようかとの思いが走るが,打ち消す.赤岳鉱泉小屋から中山乗越に向かうが,小屋の裏手からもうトレースがない.仕方なくラッセルを続け,中山乗越への上り手前で,後から来た他パーティに代わってもらい,沢筋に入り,やがて,支沢に入ったことに気づき,引き返す.隣の沢に入ったがやはり,支沢であった.ルートミスで時間ばかりが過ぎる.

K谷の「始めの方に帰りましょう」とのコメントで,当初の沢の取り着き場所に戻り,やっと柳沢右俣に入った(と確信した).昨日から降り続いた雪は沢を充分に埋め,しまっていない雪の上の歩行は,膝上,時に,沢中の窪みにはまると,腰までもぐる.交代でラッセルを続けるが,取り付きまで,着きそうにないペースである.ラッセル途中,何度も,雪の崩落の音を聞く.時に,2人で,顔を見合わせる.これが斜面ならやめだろう.K谷は,後ろから見ると,沢床の高低差の大きい所では,頭の上までの雪壁と格闘しているようである.さらに,体重差からくるものなのか,K谷のラッセルの跡は,僕ではよくもぐる.時に,激しく舞う雪景色は,僕が憧憬する世界であり,最も好む景色の一つそのものである.途中,小同心ルンゼの同定をミスし,ここは柳沢右俣かと思ったが間違いはなく,柳沢右俣であった.結局,石尊稜,三又峰ルンゼが見える所まで行き,ラッセルに終止符を打った.

引き返し,柳沢右俣を渡り,中山乗越方面に向かう登山路の途中の木に「W」マークの赤布を付け,敗退とした.さすがに,美濃戸山荘から美濃戸口の林道でさえ,足首上までのしまっていない雪道であった.

【Retry…やっぱり,登っておこう】

2月26日
いつもより遅く,9:30に武蔵小杉でK谷をピックアップ.よく知らない土地での待ち合わせは予想したようにうまくいかない.車中からアチコチと見回していたものの東急・武蔵小杉の駅を見落としてしまったようだ.後からわかったが,あんな大きな看板が見えないのは不思議なものだ.携帯電話の世話にならざるを得ないが,あらかじめ決めていた待ち合わせ場所からK谷に車の方に来てもらった.あいかわらずザックは大きく,後から見るとザックに足がついて動いているようだ.調布の中央高速のインターを目指すが,しばらくは,やはり,どこをどの方向に走っているのかわからない.ナビ頼みである.調布から中央高速に乗り,いつものように諏訪南で降り,美濃戸口に車を止め,歩き始める.

前回わかったのは,美濃戸口の駐車場の経営者は2組いるということ.今回は下の駐車場の世話になった.今日は,日没までに赤岳鉱泉小屋に着けばいいとの思いで歩く.美濃戸山荘から北沢を歩き,夕方近く,赤岳鉱泉小屋前に着く.青,黄色等のテントが多く張られている.

2月27日
3時起床.昨日の夜の野菜スープに多少補充し,朝食を取る.朝5時,懐電をつけ,テントを出る.小屋前では,既に,僕たちの前を出発していくパーティもいる.前回と異なり,よく踏まれたトレースの跡を中山乗越の方向に歩く.柳沢右股をわたる橋の所から沢筋に入る.予想したことではあるが,登山道や沢の積雪量は,1月に比べて数段多くなっており,さらに,ここ1週間の天候を考えれば,当然であろうが,沢筋トレースは消えている.時に,かすかに,それらしきトレース跡がわかる程度である.積雪量は増えてはいるものの,ラッセルの程度も,予想範囲の膝下である.うまく,トレース跡に乗れれば,足首上程度のもぐりこみですむ場合もある.雪がだいぶしまってきているようだ.交代でラッセルを続ける.

今回は,日の岳ルンゼから石尊稜に回り込めばいいと聞いていたので,沢を詰めるが,やはり上部では雪面がたち,きつい.後方からは,パーティが来ない.今日は,石尊稜は僕たちだけのようである.K谷が「あっ,人がいる」と眼前の中山尾根を指す.中山尾根には人影が見え,その方向からコールが聞こえてくる.

日の岳ルンゼに,上部に見える石尊稜の取り付きの潅木を目指し,雪壁を登る.途中,小さな岩の乗り越しをする.このピッチを含めて,残りは,全てアンザイレンで行動した.いくぶんかこなれたパーティならば,下部岩峰上の雪稜とか,草付きはロープなし,あるいは,要所のみシングルロープで行動するのだろうと思う.特に,雪稜でのトレースの有無の差は大きいと思う.今回はアプローチから終了点の稜線まで,トレース跡はなく,ルート全てのラッセルと八ヶ岳では美しい部類に入ると思われる雪稜にトレースを残すことができた.また,下部・上部の岩峰であるが,意識的に,短く切った.これは,コールのみならずロープの流れからも短く切るほうがいいと思ったことにもよる.逆に,草付き・雪稜は45m(S/Y45m,K谷50mロープ)まで伸ばせるところは,伸ばした.天候に恵まれた日ではあったが,ホイッスルは役にたち,重宝した.ちなみに,S/Yはアックス2本,K谷は1本であった.以下に,ピッチごとに記述する.

日の岳ルンゼから(1P)45mで取り付き点の潅木,K谷を迎えて,K谷が下部岩峰の取り付き点のペツルのボルトまで行く.
1P下部岩峰で正面から取り付き,右上し,バンドらしき所できる.ペツルのボルト2本.その上にリングボルト2本が見える.

写真1 下部岩峰1P目をフォローするK谷

2P下部岩峰1P終了点から,さらに左上に見える左上するバンドに乗り,バンドが終了した所から直上し,左トラバース.潅木でビレイ.
3Pビレイした潅木の左手の草付きを乗り越し,右方向に上がるリッジに乗りに登る.リッジ上に上がり,下部岩峰終了.
4P正面の尾根の小さな雪稜を前方にある斜面下まで,K谷に頼む.
5P草付きの斜面を2本のアックスで,快適に登る.右から左に廻りこみ尾根の上に出る.一部たっている所もあるが,問題はない.
6P同様に草付き斜面を登る.高度をどんどんと稼ぐ感じである.
7P草付き斜面を登る.傾斜がだんだんと緩くなる.
8P前方,雪稜をK谷に頼む.
9P再度,草付きの斜面となり,登る.これぐらいだと,ダブルアックスとは言えないが,時に,フロントポインティグとのアックス(いわゆるピオレ・パンヌ)の組み合わせで快適である.
10P草付き斜面を登る.終了後,目の前に見事な雪稜が目に映る.ああ,やっと雪稜だ.きれいだなあと一人で感心する.そして,上には上部岩峰が見える.K谷「どこ登るんでしょう」S/Y「行けばわかるかなあ」と会話になってない.
11P見事な雪稜を進む.天気も良く,気持ちがいい.
12P雪稜をK谷に頼む.45mギリまで行き,雪稜上でビレイするK谷の背景に上部岩峰が広がる.

写真2 上部岩峰を背に雪稜でビレイするK谷

13P最後の雪稜を越え,上部岩峰基部まで行く.
14P上部岩峰の左手のちょっとした凹角から登り,さらにリッジを幾分か登り,そのリッジを左から右に廻りこみ,リッジを越え,ガレ場に出る.

写真3 上部岩峰の1P目を抜けるK谷

15P上部岩峰でのガレ場に出て終了かと思い,K谷に右方向を見てもらうが間違いとわかり,K谷がそのまま,上に登る
16P 正面の小さなリッジを登り,左手の小さなルンゼに入り,ルンゼ(中間にリングボルト有)を抜け,広いガレ場を正面岩壁基部まで行く.
17P K谷「もう,ザイルいらないね」と岩壁基部に沿って右上し,稜線縦走路に出る.終了.

稜線をしばらく歩き,赤岳への登りが近くなると,地蔵尾根の分岐があり,地蔵尾根,行者小屋の横,中山乗越と通り,赤岳鉱泉小屋まで帰った.さすがに,時間が遅くなったせいか,テントの数も少なくなっていた.天気もいいので,テントから装備を出し,再パッキングし,夕方の鉱泉小屋を後にした.K谷は,飛ばしに飛ばしていたが,それに引きつられるように歩き,鉱泉小屋から美濃戸口まで,近年には珍しいタイムで帰って来た.後は,中央高速に乗り,走る車も少なく感じられるような中を東京まで帰った.久しぶりの楽しい山行であった.

2005年山行一覧に戻る