北アルプス/スバリ岳西尾根主稜 ジャンル
バリエーション
日 程 2005年7月17日(日)〜7月18日(月)  〔1泊2日 メンバー S/Y(単独・記)
行 程

7月17日 扇沢10:00/10:15−大沢小屋11:35−(引き返し)扇沢13:10−針の木頂上18:30−マヤクボのコル手前18:45

7月18日 マヤクボのコル手前4:00−スバリ岳西尾根取り付き5:10−スバリ岳頂上9:00−(デポ回収)−針の木峠11:00−扇沢14:30

「岩登り始めた動機はなんですか.」との問いかけに,僕「劣等感かなあ.岩登りしているとカッコよく見えるでしょう.」と応えると,「さっき,忽然とあっちの頂上に,ザイルを結んで,あらわれた時は,カッコよかったですよ.」と女性が答える.

スバリ岳頂上.午前9時.快晴.黒部からの風が心地よい.前日17日,早朝,自宅を出た.本来の予定は,16日から18日までの3連休で,スバリ岳西尾根主稜を登るはずであった.ところが天候がはっきりせず,好天,もしくは,曇り空の期待が持てる17,18日の2日間に変更,しかも,初日,朝,出発とした.このため,西尾根下部からのトレースを諦め,核心部を含む上部半分を目標とした.結果的には,天候には恵まれ,2日間とも晴れた後立山で,クライミングをして過ごすことができた.

17日,調布ICから中央高速に乗る.朝方の雨はやんだが,どんよりと曇っている.行きかう車の数は多い.甲府盆地を過ぎる頃から晴れ間が見えはじめ,八ヶ岳を過ぎる頃には晴れた.

扇沢は,連休のためか人出も多く,車は扇沢ロッジの駐車場に止めるように誘導された.一度は,宿泊してみたい扇沢ロッジを横目で見ながら,大沢小屋を目指して出発する.大沢小屋まで,樹林帯,3度大きな沢を渡るが,その時以外は,蒸し暑い.やっとのことで,着いた大沢小屋で,ジュース飲もうかと思い,サイフを捜すが,ザックの中にない.ザックの中を懸命に捜すが,ない.「しまった.車に忘れたか」と思い,ザックをデポし,仕方なく,トボトボと車まで,空身で引き返す.車で,座席とドアにはさまれたサイフを見つけ,ついでとばかり,扇沢ターミナルで昼食を取る.

その後,大沢小屋まで戻り,さらに樹林帯を進み,雪渓に出る.高度2000mくらいのノドと呼ばれる沢を詰めると,白砂のコルと呼ばれるゴタテ主稜線の箇所に上がれるはずだが,運悪く,その高度近辺には3本の沢がある.最上部がそれだろうと思うが,ガスが出てきて上部が見えなく,確信がもてない.どうせ晴れ間を待っても,今日のような運動靴とアイスハンマー1本では,登るのは大変だろうと思い,針の木雪渓を詰める.

針の木峠から針の木岳の山頂へ.だいぶ夕暮れが迫ってきている.日没手前まで,歩き,まだ日があるうちにツエルトを張り,食事も作っておきたかった.この方が,燃料,電池の消耗も少なくてすむ.暗くなれば,寝るだけだ.針の木岳頂上からマヤクボのコルに一張りのテントが見える.マヤクボ沢を詰めたようだ.


写真1 夕方の針の木からスバリ岳、赤沢岳方向を望む

マヤクボのコル手前,大岩で形作られる岩小屋を見つけ,山嶺に沈みかけた太陽を見ながらツエルトを張る.ジフィーズができた頃から暗くなり始めた.早々にジフィーズ,コンソメスープ飲み,シュラフカバーに潜り込む.何度か,寒さのため眼を覚ますが,体を丸め,寒く感じるところをさするぐらいしか方法はない.

午前3時,起きる.昨夜のジフィーズに無印良品のスープをいれ,オジヤにし,さらに,インスタントコーヒーを飲む.水を2リットル持ちあげ,まだ,充分残っている.

ツエルトをたたみ,余分なものをデポし,出発する.まず,コルまで降り,スバリ岳頂上を目指して登り始める.スバリ頂上から,今度は,西尾根主稜と中尾根の間を下降する.ガレ場で,いつ,岩や石が落ちて来てもおかしくない.可能な限り,落石をおこさないように,かつ,上部からの落石の通り道にならないと思われるところを降りる.ルンゼからも見て,側壁にブッシュが見えてくると,下部に近づくはずだからと思いつつ下降する.ある程度下降して,足元の側壁に,潅木が見え始めると,下降をやめ,装備を身につけた.

午前5時すぎ,まず,側壁から稜線に上がる.一部,岩が露出しているが,潅木は多い.特に,ハエマツが多い.ロープをハーネスのギアラックに付け,上のリッジまで.この1p,ノーザイルで問題なし.2p,潅木に支点を取り,登る.傾斜の緩いフェースを行き,どこでも登れそうだが,正面のクラックに取り付く.思ったよりも立っている.ザックを背負って登ろうとするが,無理.素直にザックをおき,手を伸ばして,エイリアンを決め,攀じ登る.さらに,傾斜の落ちたフェースをいき,切る.アプザイレンして,ザックを背負い,登り返す.一方,下降したルンゼから,落石の音が,やけに,聞こえてくる.登れなかったら,ルンゼに下降し,再登高かと思っていたが,落石の音を聞くと,「ヤバイなあ」登るしかないかと思う.ところが,ルンゼを3人パーティが下降しているではないか.落石は,マヤクボのコルにテントを張った彼らが起こしているものであった.彼らは,尾根下部まで降りていった.3p,バンドを行き,フェースにのり,切る.問題なし.4p,細かなフェース.と言ってもしれている.さらに,上部のかぶった岩に取り付く.また,ザックを置くかと思ったが短いので,上部に,ナチュプロを決め,一気に,乗り越す.後に見える黒部湖がきれいだ.5p,だいぶ傾斜が落ちたリッジを行く.岩がもろい.6p,多分,最後の登りだろうと思い,左からリッジにのり,ピークに出る.左の登りで乗った岩が崩れ,右手ランジ.ひじが痛い.登ったピークの向こうに,スバリ岳頂上が見える.ここで,ザイルをたたむ.最後の7pはノーザイルで,注意して,リッジを行く.全体として,今回の1ピッチは,短くしたと思う.


写真2 スバリ岳西尾根P4ぐらいから黒部湖を臨む…リッジは西尾根、緑の潅木近辺は登っていない


写真3 スバリ岳西尾根P4ぐらいから尾根上部を望む …スバリ岳頂上は見えない

迎えてくれたのは,たまたまスバリ岳頂上にいた3人の女性パーティだった.彼女らは,僕のザイルを持ったり,ギアを持ったりして,その重さや道具に感心をしていた.中の一人が,「岩登り始めた動機はなんですか.」と聞いてきた.この8ヶ月間,単独登攀の練習をしてきた.その一つの実践の場として,試みたのが,今回のルートであった.天候のため,当初の目標はかなえられなかった.

しかしながら,8ヶ月間程の単独登攀の練習の結果に対して,「さっき,忽然とあっちの頂上に,ザイルを結んで,あらわれた時は,カッコよかったですよ.」との答えが用意されていたならば,これだけで,僕のトレーニングに対する充分な評価であり,ありがたいことだと思う.結果とすれば,さらに,前進できるであろう.

スバリ岳頂上,針の木岳頂上とゴタテ稜線をMP3を聞きながら歩き,さらに,針の木峠,針の木雪渓,大沢小屋と通り,扇沢に帰った.大沢小屋からの帰り道の途中,沢を渡る時に木陰に入り,最後のアンパンをほうばる.水筒の雪解けの水を口に含む.涼風が疲れた体を慰める.眼には青空と流れる白い雲.自らの生を実感できる夏山のひとときである.

大町温泉で一風呂浴び,豊科ICから長野道に乗ると,帰りは,中央高速40kmの渋滞と聞き,双葉SAで一眠りした.それでも,25kmの渋滞であったが無事,自宅まで帰ってきた.さすがに,夏は中央高速は混む.

【登攀装備】
・ロープ:9.6mφ50m(シングル仕様)
・カラビナ:17枚(内1枚安環付き)
・エイリアン:1セット6本
・クイックドロー:3組
・自己確保:イージーエイダー+カラビナ
・前進用デバイス:ソロエイド+安環付きカラビナ
・登り返し用確保デバイス:ベーシック+安環付きカラビナ
・下降具:ルベルソ+安環付きカラビナ
・スリング:120cm2本,60cmT3本,R3本(内1本芯抜き)
・ピトン:BD ナイフブレード(1,2,2セット),バカブー(3,4,5,6)
        アングル(1,2,3)
・アイスハンマー:ミゾーこだま
・ペツル・ハーネス&チェストハーネス
・ジャンピングセット+リングハーケン6本(撤退用)
※ピトンは未使用,使うならロストアロー(特に,ソードオフしたヤツ)の方がいいのではないかと思った.ナチュプロは効果があった.プロテクションは残置ハーケンも使用.

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