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京都・鞍馬山〜貴船山登山
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■2010年12月9日(木) 晴のち雨(雪)
叡山鞍馬線・鞍馬駅−鞍馬山−貴船神社−滝谷峠−貴船山−二ノ瀬駅
N村(単独)

 仕事で京都へ行った翌日、京都北山をハイキングしたかったが、疲れて寝坊し、ホテルを出てからも京都の交通が把握できず迷い歩いて時間ばかり過ぎていく。
 出町柳への行き方がわからず、地下鉄今出川駅から同志社大学の前を歩いた。京都御所の黄・紅葉した木が青空に映え、部活だろうか、その下を女子高生のグループが走り去って行く。
 出町柳に着くと、目当ての北山方面へのバスがないことが判明した。北山へは行けないので比叡山でも登るかと、叡山電車でケーブル駅へ向かった。ところがケーブルは点検で運休中だったので、仕方なく、また電車を乗り換えて鞍馬へ向かった。
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 12時ごろ、山門をくぐって鞍馬山へ入山。鞍馬山全体はお寺(鞍馬寺)の境内にあたり、お寺参りがすなわち鞍馬山登山である。近代以前の宗教登山のロジックがちゃんと生きている。
 自然がとてもきれいに整えられている。建物、宝塔、石碑などの人工物と、樹木、草、苔、岩など自然物との調和した美しさが追求されている。少なからぬ資金と労力をかけて管理、維持されている。最上部には霊宝殿があり、そこは鞍馬山博物館でもある。鞍馬山の山上一帯は自然の宝庫であり、山全体が自然科学博物苑であると書かれていた。
 そこから10分ぐらい登ると、「木の根道」あたりから山道は下りに変わった。鞍馬山の山頂らしい表示は、どこにも見当たらなかった。そして、鞍馬山の山頂一帯は常緑広葉樹林の極相林であると説明されていた。
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 20分強下って反対側の貴船川沿いに出た。貴船神社本宮、奥宮と立ち寄る間に雨脚が強まったので雨具を着て、さらに奥へ向かう。本来は下山すべき時刻だが、夜間行動もいとわない悪いクセが出た。
 滑りやすい足元に注意しながら、岩と苔の沢沿い道を滝谷峠へ登る。一帯は北山杉の林で、間伐も枝打ちもきちんと行われている。人工林でも荒れた感じはなく気持ちよく歩ける道である。そのため、イメージしていた京都北山の峠みちのひとつを歩いているのかと思う。
 やがてハラハラと雪片が舞い降りてきて、空気はずっと冷たくなってきた。山で夜になるとイヤだなと思いながら、けっこうな急坂を休憩なしに登っている。やがて沢は糸のように細い流れになり、稜線が近い感じがしてきた。稜線のV字の切れ込みが見え、そこへ登りきると峠だった。杉林は手前で終わって、稜線近くは広葉樹の明るい自然林になっている。そこでは激しく雪が吹き付けているのに驚いた。
 「キョッ!」というような一声を発して、シカが駆け去る物音が響いた。
 山歩きを楽しむシチュエーションではないが、急いで歩くとバテたりケガをするので、むやみに急ぎはしない。その代わりに、パンを入れた袋を手に提げて食べながら歩いた。空腹感が収まると体が暖まったような気がした。
 こんなふうに、ちょっと緊張したぐらいの山歩きはきらいではない。
 いつしか北山杉の林が復活していた。その中央に白い石が積み上げられている。何だろうと近づいてみると、そこが標石も道標も何もない貴船山の山頂だった。
 鞍馬山といい、貴船山といい、山頂の存在がこれほど重視されない山も珍しいかもしれない。16時ごろ、何も見えない暗い杉林のなかで、雪がただ横殴りに吹き付けるばかり。
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 目的の山に登れたので、あとは最短距離で下るだけである。二ノ瀬駅まで約1時間の予定。
 途中、また「キョッ!」と叫んでシカが走り去った。少し標高を下げただけで雪は小止みになり、暖かさが戻ってきた。空に青味がのぞいて、西の空は少し紅くなっていた。今回行きそびれた京都北山のいくつかの山は、そちらの方角にある。
 ゆるやかなことを意味する「二ノ瀬ユリ」は、斜面をきちんと削って切られた歩きよい道だった。足元がギリギリ見えなくなるぐらいの17時前後、二ノ瀬の集落に下りた。
 山里の風情の残る風景、ローカルな雰囲気の叡山電車、その路線沿いに京都産業大学や京都精華大学があり、若い素朴な学生たちが乗り降りする。
 30分も電車に揺られれば、またあの国際観光都市に変わるのが不思議なくらいだった。


写真1:滝谷に沿う峠みち   写真2:雪の風景  


 写真3:貴船山山頂